デパートマダムが、 ちょっぴりお茶目な本格テキスタイラーに聞く。
No.001
渡邉 航一郎/booworks
手織り作家
ちょっと変わったインタビュー。
毎回、違う誰かになりすまして、作家さんにアレコレ聞いてみます。
今日は、デパートマダム。
百貨店に週5回通ってます。
百貨店の商品什器は、わが家のインテリアのようなもの。
店員さんも十中八九で顔見知り。
本日は、いつも百貨店でおしゃべりしてる手織り作家さんとお茶しますの。
マダム:
こんにちは。お久しぶりでございます~。
渡 邉:
遅くなりまして、すいません。
昨日もお会いしましたね。(笑)
マダム:
今日は暖かいので、ちょっとお外でおしゃべりしません?
渡 邉:
そうですね。
僕にしか出せない風合いを手織りで。
マダム:
いつもデパートで作品を見させてもらってるけど、あなたの作品は、ほんとに手織りなの?
渡 邉:
はい、もちろんですよ。
大阪の豊中市に服部阪急商店街っていう、ちょっぴりレトロな雰囲気で、新旧のお店が並ぶ通りがありまして、その一角に手織りのアトリエを開いているんです。
アメリカ製のジャッキ式手織り機を使っているんですが、仕組みは日本のものとそんなに変わらないです。
縦糸をセットして、横糸を順繰りに通していきます。
少しだけ専門的ですが、横糸の打ち込み強さによって、同じ素材でもぜんぜん違
った仕上がりになるんです。僕は、男性の中でも比較的、手のひらが大きいほう
だと思うんですが、それが生地の打ち込みに影響してると思います。
自分では強く打ち込んでる意識はないんですが、自然と力強く打ち込んでいて、生地の密度が高い仕上がりになっちゃいます。でも、それが、僕の生地の特徴なんです。
生地密度が高いんですが、それでいて軽やかな仕上がり、それが僕の目指す理想ですね。
マダム:
なんだか本格的にやってるのね。
そう言われれば、軽やかなのにしっかりしてるわね。
作品は、仕事と趣味のコラボレーション。
マダム:
あと、あなたの作品は、色使いがハイカラね。
渡 邉:
お褒めの言葉、ありがとうございます。
僕の趣味のひとつが散歩なんですが、散歩で出会った光景から色の組み合わせを拝借したりします。
渡 邉:
最近は、梅の開花に出会いましたね。
梅の花は、まだ周りに緑があんまりない時期に赤や白の明るい花を咲かせる。全体の色と花の色のコントラストが大きいのに、全体としてはとってもナチュラルな色合いに見えます。自然の現象なので、当たり前なんですが、その当たり前を織物にも取り入れたりしますね。
僕の作品は、比較的いろんな色を織り込んだものが多いですが、いっぱい色を使うのに、うるさくならない、派手すぎない、ナチュラルに感じられるようなバランスを工夫しています。
これは、お散歩効果かなと。
マダム:
ふーん、風景の見方が変わるわね。
ところで、そろそろお茶しません?
渡 邉:
そ、そうですね。
僕の行きつけの純喫茶にでも入りましょう。
境界のないライフスタイルが楽しい。
マダム:
私は、百貨店にいるあなたしか知らないけど、他にどんな活動をしてるの?
渡 邉:
活動といいますか、
織物創作が中心ではあるんですが、手織り機の前にいる時間はそんなに長くないんです。作家仲間とイベント企画をしたり、講師として教えにいったり、ワークショップを実施したり、いろいろ派生的なことをやってます。
マダム:
プロヂューサーみたいね。
渡 邉:
はい、プロデューサー的なこともやってますね。
先ほどの散歩なんかの趣味や、新しいことの企画、もちろん織物創作も、そのすべてがグラデーション的なんです。
なんといいますか、いろんな発見がいろんな場面であるので、仕事とプライベートを線引きしすぎると、とってもよいアイデアに出会っても、それを見逃してしまうような気になるんです。
こんな言い方をすると、ちょっとしんどそうに聞こえるかもしれませんが、めっちゃ楽しいんです。いろんなところにアイデアの種がつまってる感じで。
ものづくりがコミュニケーションツール。
マダム:
以外に立派ね。
それにしても、あなたは笑顔がやさしくてよいわ。
渡 邉:
またまた、お褒めの言葉をありがとうございます。
僕は、織物を含めたものづくりが、使い手さん(お客様)とのコミュニケーションツールになると思っています。
コミュニケーションって、共通点を見出すことでもあると思ってるんですが、たとえば、百貨店ではじめて出会った使い手さんとの短い対話の時間の中で、共通点を見いだすのって、とっても難しいんです。
でも、作品があれば大丈夫。
作品を介して、いろんな共通点を発見できます。
色の好みとか、どんなオシャレが好きそうなのかとか、自分でつくることが好きそうだとかを。
とにかく使い手さんといっぱいおしゃべりをして、その人のおすすめを一緒に考えたり、あるいは、次の創作活動のヒントを得たりします。
だから、コミュニケーションって重要なんです。楽しいですしね。
少しのお手入れで、長く使えるものを。
マダム:
あなたの手織りかばんを3つも持ってるんだけど、お手入れはどうしたらいいのかしら?
渡 邉:
手洗いで、スポンジでなでるように、表層の汚れをとるだけで大丈夫です。
ふつうの家庭用洗濯洗剤を使えますよ。
「ちょっと面倒になって、洗濯機へポイッ!」だけ控えていただければ、ずいぶん長持ちすると思います。
手織りを介した作家が増えてほしい。
マダム:
もっと、あなたみたいな作り手さんが増えたらいいわね。
渡 邉:
そうなんです。
僕は、いろんな社会の状況をあんまり否定しないほうで、ファストファッションがだめだとか、ナショナルチェーンの商品がどうだとかはないんですが、クラフトマンにしかできないオリジナルの表現や、使い手さんに寄り添うスタイルは大切にしています。
そんな手織り作家が増えることを期待していますし、そうなるような活動を展開していきたいと思ってます。
あの手織り作家がいるから、あの地域が盛り上がり始めた!みたいなことにつながっていけば嬉しいです。
マダム:
すばらしいわね。
そろそろいい時間だから、百貨店へ向かいますわ。
また、おしゃべりしましょう。
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プロフィール
渡邉 航一郎/booworks
2010年よりbooworksとして手織り素材を用いた雑貨やかばんの販売をスタート。
2015年より豊中市服部にアトリエショップをOPEN。
百貨店催事、手作り市出店の他、簡単に手織り体験が出来るワークショップを全国各地で開催しています。
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